税金に時効はあるか徹底解説!
個人事業などを営んでいる方はもちろん、それ以外にも対象となる方は確定申告をしなければなりません。しかし、そもそも自分が申告しなければならないと理解しておらず、無意識に納税していなかったというケースも珍しくありません。
そこで、今回は、税金には時効があるかどうかについて解説します。さらに、税金を支払わなかったらどうなるかについても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
もくじ
納税は義務?
日本国憲法第30条で「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」と定められています。
税金は国を維持、発展させるために必要不可欠であり、納税は国民の義務なのです。税金を納めることはもちろんですが、正しく申告することも重要です。
確定申告をしない人は?
正社員や派遣社員、アルバイトやパート雇用の場合、給与所得であることから、確定申告しないことが一般的です。ただ、副業をしていたり、医療費控除などを受けたりするときは確定申告が必要となります。さらに、フリーランスや個人事業主も確定申告が必要となります。
ただ、確定申告の義務があっても、自分は対象でないと判断して確定申告しないケースもあるのです。通常、副業で年間20万円以上の収入がある場合は確定申告が必要となります。
しかし、そういったルールを知らずに確定申告していない事例も少なくありません。
所得税の2つの時効
結論からいうと、税金には時効があります。時効がなければ、納税者はいつまでも安定を得ることができず、国税も徴収するのが難しくなってしまうのです。そのため、納税者の安定と国税の徴収執行の難しさを背景に時効制度が作られました。
除斥期間、消滅時効
税金の時効には、除斥期間と消滅時効という2つの概念があります。
除斥期間とは、特定の権利や請求が行使できる期間が、法律によって制限されることを指します。除斥期間が過ぎると、権利や請求が無効となるため、権利者はそれを行使できなくなります。つまり、除斥期間が過ぎると、徴収する権利を失ってしまうのです。
一方、消滅時効とは、権利自体が消滅してしまうことを意味します。
除斥期間と消滅時効は、ともに税金を支払わなくてもよくなるという点については同じです。しかし、概念自体には違いがあるので、それぞれの特徴を理解しておきましょう。
税務署権限の賦課権と徴収権
税務署には税金を確定させたり、税金を徴収する権利があります。仮に故意に納税していないことが発覚した場合、納税者に対して通知をおこない、さまざまな手段を使って税金を徴収することができます。
賦課権の時効
税金を徴収するためには、まず税金額を確定させなければなりません。賦課権とは、国税債権を確定させることをいい、わかりやすくいうと、納税義務を確定させる権限のことを意味します。
税務署には賦課権があり、納税金額を確定することが可能です。ただ、賦課権の時効には除斥期間が設けられています。除斥期間については、税金の種類によって異なり、所得税は5年、贈与税は6年と定められています。
しかし、所得税の5年や贈与税の6年というのはあくまでも通常の手続きにおける除斥期間です。脱税等の不正があった場合については、除斥期間が7年に延長されます。
除斥期間が過ぎると賦課権を失い、税金の金額を確定することができなくなってしまいます。
徴収権の時効
税金を徴収する権利を徴収権といい、税務署に権限が付与されています。徴収権の時効については、消滅時効によって期間が定められています。
所得税の徴収権の消滅時効は5年であり、5年が経過すると徴収権が消滅してしまうのです。しかし、ここで注意が必要なのが「時効の中断」です。時効の中断が決定すると、中断された時点から5年が経過しないと、徴収権は消滅しません。
なお、時効の中断については、差し押さえや納税者の承認によって決定されます。もちろん、税務署は税金を徴収することに注力することから、徴収せずに5年が経過することはないでしょう。
つまり、一度徴収権が発生すると徴収権の時効が成立する可能性は非常に低く、確定した税金を支払わなくていいとなることはほとんどありえないのです。
税金の時効を待つことはできる?
税金を支払えなかったり、故意に支払わなかったりして、そのまま税金の時効が成立するまで待とうと思う方もいるでしょう。しかし、先述の通り、一度徴収権が発生すると、時効が成立することはありません。
また、賦課権については、所得税が5年、贈与税が6年という除斥期間が設けられているので、その期間を過ぎれば時効が成立する可能性はあります。ただ、税金の時効という制度があるものの、時効が成立するまえに税務署がなんらかの形で税額を決定して徴収することから、基本的には時効が成立することはほとんどないと考えておいたほうがいいでしょう。
なお、国税庁が調査した内容によると、平成28年~平成30年度の調査において、無申告の調査件数が増加しています。さらに、追徴課税額も増加していることから、無申告が発覚して追徴課税が課せられていることがわかります。
税金を支払わなったらどうなる?
時効が成立しない場合は、税金を納めなければなりません。しかし、手元に十分な資金がなく、納税できないといったケースもあるでしょう。とはいえ、一度確定した税額については、必ず納税しなければなりません。
無申告加算税
無申告加算税とは、所得等を申告しておらずあとから税務署に指摘されたときに発生する税金です。無申告加算税の税率は、税額が50万円までが15%、50万円を超える部分については20%となり、通常の所得税よりも非常に大きな税額となります。
ただ、税務署が調査するまえに、自主的に申告した場合は5%の税率で済みます。また、そのときの内容や状況によっては、通常の所得税だけの納税で済むケースも少なくありません。
過少申告加算税
過少申告加算税ついては、過小に申告したときの税金と本来の税金の差額に10%を乗じた金額になります。
さらに、50万円を超えた部分については15%の税率が適用されるので、無申告加算税と同様に納税しなければならない税額が大きくなります。ただ、税務署が調査するまえに自主的に申告した場合は、追加で課税されないケースも珍しくありません。
重加算税
重加算税の税額については、無申告加算税に代わる部分が35%、過少申告加算税に代わる部分が40%となり、非常に高い税金を支払わなければなりません。また、重加算税に該当するような申告を短期間に繰り返した場合は、通常の重加算税の税率にさらに10%追加されます。
延滞税
延滞税とは、納付期限を過ぎた場合にかかる税金です。納付期限から実際の納付日が遅れるほど、税額が膨れ上がります。
また、令和3年1月1日以降については、納付期限の翌月から2か月経過するまでは年7.3%の税率が加算されます。そして、2か月以上経過する場合は、年14.6%の税率が加算されるので、当初の税額よりも大きくなってしまうのです。
税金を支払えない場合はどうしたらいい?
納税する意志があっても、資金の問題により支払えないケースもあるでしょう。資金繰りが厳しかったり、個人所得から捻出するのが難しかったりなど、さまざまな理由によって納税できないことがあるかもしれません。
その場合は、税務署からの通達、通告を待つのではなく、自ら相談したほうがいいでしょう。税務署に相談せずに納税を無視しつづけると、財産を差し押さえられたり、銀行口座を凍結されたりする可能性があるのです。
あらかじめ税務署に相談することで、差し押さえを回避できたり、延滞税等が免除されたりするケースがあります。なお、どうしても資金が用意できないときは、金融機関や公的機関に相談して資金を工面できるように検討することも必要です。金融機関によっては、親身になって相談に乗ってくれることもあり、融資してくれるケースもあるでしょう。
もし追徴課税が課せられたらどうする?
追徴課税は原則、一括で支払わなければなりません。とはいえ、通常の税額よりも高い金額を納税しなければならないので、支払いが難しいケースもあるでしょう。
特定の事情があれば、納税を猶予してもらえる可能性があります。たとえば、災害等で売り上げが大幅に減少したり、支払いの対応などができなかったりする場合は猶予してもらえる可能性があります。
そのほか、病気で対応できない場合も対象になるケースがあるでしょう。さらに、貸し倒れや不渡りのときも申請することが可能です。
なお、最終的には税務署の判断となるので、申請したら必ず認められるというわけではありません。
そのため、そもそも追徴課税を受けないように、適切に会計処理をおこない申告することが大切です。
まとめ
税金の時効制度はあるものの、時効になるまえに税務署から指摘されるので、納税を逃れることは基本的にはできません。
税金を払えないときは、追徴課税が課せられるケースがあり、通常よりも高い税金を納める必要があります。ただ、災害や盗難、病気など、特定の事情に該当すれば、納税の猶予を申請できる可能性もあります。
納税に困っている方は、税理士等に相談して対策を練ることが大切です。